○第１次訴訟判決
【第１次訴訟判決の内容と評価】
１、判決の結論
大阪地方裁判所は、平成２２年１０月２８日に、レジデンシャル－ＯＮＥを購入し被害を受けた原告３名からの髙木証券に対する損害賠償請求を認める判決を出しました。判決で認められた損害賠償金額は原告Ａさんにつ
いて金３７２９万２００１円、原告Ｂさんについて金２７１０万３３０７円、原告Ｃさんについて１４８８万３３９６円です。
髙木証券がレジデンシャル－ＯＮＥを販売する際のリスクの説明が不十分であったという説明義務違反が認められました。過失の割合については、髙木証券側に７割の過失があり、原告側に３割の過失があるとされまし
た。
２、髙木証券の責任の原因
髙木証券が販売していたレジデンシャル－ＯＮＥは、投資家が出資したお金だけではなく、銀行から投資資金の借入をおこなっていました。投資家が出資するお金に対して、銀行から借りた投資資金は、
３００％～４００％にもなっていました。さらに、銀行からの借入を投資家からの投資よりも優先的に弁済するという約束がされていました。 そのため、レジデンシャル－ＯＮＥには、不動産が値下がりしたときに、現実の不動産市場価格の下落よりも大きな損害が発生してしまう、と
いう特別なリスクがありました。このようなリスクのことを一般に「レバレッジリスク」といいます。
判決は、①髙木証券はレジデンシャル－ＯＮＥを販売するにあたっては投資家 にレバレッジリスクをきちんと説明する必要があった。②しかしながら、レジデンシャル－ＯＮＥのレバレッジリスクは投資家に対してきちん
と説明されていなかった。③リスクの説明をしなかった責任は髙木証券の組織全体にある。
としています。
３、原告側の過失
その一方で、判決は、原告である投資家にも、高利回り（７～１１％）のレジデンシャル－ＯＮＥを購入するのであるから、高いリスクがともなうことを見抜くべきであったとして、原告である投資家にも３割の過失があ
るとしています。
４、今回の判決のプラス面
判決が、髙木証券にレバレッジリスクの説明義務があることを認めたこと、レ
バレッジリスクが投資家に説明されていなかったと認められたことは、評価でき
るでしょう。
５、今回の判決のマイナス面
判決が①リスクの高いレジデンシャル－ＯＮＥを、安全指向であった原告らに 販売したこと自体がそもそも適合性原則違反で違法であるという論点について判断していないこと、②原告の個別の事情（年齢、職歴、学歴、
投資経験など）をまったく検討していないこと、③原告である投資家に３割もの過失を認めたこと、④レジデンシャル－ＯＮＥの配当金を損害 から差し引くときの順序が適切ではないために、結果として損害賠償金額が低くなってしまったこと、は妥当ではないと考えられます。